東京事変『永遠の不在証明』。
4月8日リリースのアルバム『ニュース』収録の本楽曲は、『名探偵コナン 緋色の弾丸』主題歌として書き下ろされたミステリアスな楽曲だ。アルバム発売に先駆け各種ストリーミングサイトでは先行配信開始されており、MVも公開されている。
ここでは楽曲の歌詞に注目しながら、タイトル『永遠の不在証明』に込められた意味を考察していく。最後までお読みいただければ幸いである。
タイトル『永遠の不在証明』
楽曲のタイトル『永遠の不在証明』。
我々が口にする ”アリバイ” という言葉は日本語的に言うと ”現場不在証明” である。(Wikipedia参照)。それは名探偵コナンのような探偵物でいうところのトップシークレットであり、物語の基盤を成す重要な要素だ。
永遠の不在証明。永遠の謎。
果たしてこれが何を意味しているのか、歌詞に着目して読み取っていきたい。
歌詞考察
重たい敵意込められた弾がほら緋く通ずる前に
掻い潜れ飛び違う弾を避け 道無き道を駆けて追いつきたい突き止めたい その真相最高機密
東京事変 永遠の不在証明
楽曲序盤では『名探偵コナン』の物語を彷彿とさせるスリリングな世界観が展開される。飛び交う弾丸を避けながら、たった一つの真実を求めて追いかける。
物語の世界を引き継ぎ盛り立てる、まさしく映画の主題歌に相応しい歌詞。しかしその後の歌詞では少し主題がずれてゆく。
加害者にはいつでも誰でもなれる仮令考えず共
御座形な言葉も凶器となる 果敢無き人の尊厳
(中略)ああ仮初めの人生を愛し合うのも啀み合うのも
詰まり各自選ぶ相棒次第どうして間違えるのか
味方の自分が最後まで奇々怪々なる存在
東京事変 永遠の不在証明
2番では唐突に、”何者であっても加害者になりうる”という犯罪の本質が語られ始める。
人間は様々な経験の積み重ねの上で今を生きている。つまり、今自分がどんな人生を歩むのか、愛し合うか啀み合うかは全て各自が選ぶ相棒次第。道中で出会った人間次第というわけだ。
そして「味方の自分が最後まで奇々怪々なる存在」。自分自身が何者であるか、その本質は霧の中。自分自身でさえその答えはわからないのだとここでは歌われている。
ぼんやりと”永遠の不在証明”の正体が見え始めたが、それはこの後の歌詞でさらに明らかなものとなってゆく。
世界平和をきっと皆願っている待ち望んでいる
白か黒か謎か宇宙の仕組みは未だ解明されない
今沢山の生命が又出会っては活かし合っている
せめて誰かひとり死守できるとしたら万々歳か
喜びとは怒りとは悲しみとは灰色に悩んでいる
元々の本当の僕はどこへ
東京事変 永遠の不在証明
人は元来世界平和を望んでいる。誰も意味のない戦争など望んでいない。生まれてきた時は誰しもが清廉潔白。いつの間にやら主題は性善説的な話へと移り変わっていく。
なのに人間はいつしか過ちを犯す。そこへ至る過程を解き明かすはあまりに複雑で難解だ。
ここで宇宙の話が引き合いに出される。”宇宙”はいうなれば”混沌”の代名詞的な存在で、ありとあらゆる要素がまじりあって存在している。そしてその仕組みは今もなお解明されていない。
それと全く同様に、この世の中はありとあらゆる生命が出会い、活かし合っている。
出会いだけではない。喜びも悲しみも、数え切れぬ感情が重なり合っている。全てが複雑に混ざり合い、”灰色” として存在しているのである。
そこで生きる人間は宇宙と同じように、様々な出会いが複雑に絡み合う混沌とした存在なのだ。
白か黒か謎か。宇宙の心理も自分自身の正体も、未だその本質は解明されていない。
その最高機密は一体何なのか。全部真っ黒かはたまた白か。
そしてかくいう僕も一人の人間。
元々の本当の僕は一体どこにいるのか。僕の正体は一体何者なのか。
『永遠の不在証明』。そこに真実は永遠に存在し得ない。
『真実はいつも一つ』
そんな決め台詞の裏にあるカオスを描いた、ミステリアスな楽曲だ。
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