秋山黄色『モノローグ』。
2月11日のMV公開後、再生回数は破竹の勢いで800万再生まで到達。ドラマ『10の秘密』主題歌に抜擢された、新進気鋭のアーティスト・秋山黄色の注目作です。
変えることのできない過去を悔やみながらも、何か救いがあればと願う祈りの歌。
ここでは『モノローグ』の歌詞に注目し、その意味を考察していきたいと思います。
曲名『モノローグ』について
モノローグとは、相手無しに登場人物が心境を吐露する ”独白” のこと。
秋山黄色さんは楽曲に寄せて次のようにコメントしています。
誰しもが抱えている、もう変えられない事を悔やむやりきれない独白。それによって少しでも何かが変われば少しは救われるのにという思いをこの曲に込めました。
https://natalie.mu/music/news/360468 より
楽曲の中で、主人公は絶えず過去の出来事を後悔して思いの丈を叫び続けています。
歌詞考察
変えられない過去への後悔
常に『モノローグ』の歌詞の中心にあるのは、二人で過ごした日々へのどうしようもない後悔です。
僕の知らないその顔は
最初から隠していたの?
秋山黄色 モノローグ
楽曲は、ともに長い年月を過ごしてきた相手への問い掛けからスタートします。
内容から察するに、二人はかつて恋愛関係にあった様子。しかし相手には、主人公にずっと隠してきた "僕の知らない顔” があったのでした。
僕たちは悲しみを背負い続けて
傷だらけのその先に一体何があるの? 教えて悲しみは2つに 喜びは1つに
ありふれた願いも零した手のひらが
掴めるものなんてもう何もないのに
僕らはどうして夢を見てしまうんだろう
秋山黄色 モノローグ
互いの悲しみを二人で分け合い、幸せを一緒になって喜ぶことができなかった。
相手が主人公に隠してきた "僕の知らない顔” は、独りで抱え込んでいた ”悲しみ” でした。これはラスサビの「悲しみの全てを隠していたなら」という歌詞からも明らかになります。
恋仲の二人ならば誰しもが願う ”悲しみを二人で分け合う” という、ありふれた願いすら叶えることができていなかった二人。こんな僕らがどうして未だに夢をみてしまうんだろう。僕らに救いなんてあるはずないのに。
主人公は情けない、二人で過ごした過去を悔やんでいます。
運命すらこんなにも疑惑と不安に満ちているから
自分のせいにしてみても楽になれるはずないよ「失った後にしか気付けない」という言葉を
嫌になるほど聞いてなお気付けなかった
ずっと
秋山黄色 モノローグ
"僕の知らない顔” があった。
ただそれだけのことで、確かなものだったはずの運命すら疑惑と不安に満ちたものに変わってしまいました。本当は相手のあの言葉も嘘だったのかもしれない。僕らの幸せな時間も、空虚で虚しい幻想だったのかもしれない。二人で過ごした日々すら疑ってしまうのです。
確かなものなど何もないから、今更自分のせいにしてみたって楽になんかなれやしない。失って初めて二人過ごした時間の意味を知った。
もうどこにも光の見えない暗闇の中。悔やむしかない現実の中に主人公は立たされています。
最後の希望の光
希望なんて何も見えない、過去を悔やむだけの状況。
しかし主人公は、そんな中で一筋の光を見出します。
悲しみは2つに 喜びは1つに
それすら出来ずにもがいていたね
分かり合える事なんてほんの少しだけど
それでも日々が色褪せないのは悲しみの全てを隠していたなら
最初から僕らは惹かれ合っていないと分かるから
秋山黄色 モノローグ
隠されていた "僕の知らない顔” 。疑惑や不安に溢れているはずの過去。それなのに、主人公は未だに二人で過ごした過去が色褪せることなく、輝きを放っていることに気付きます。
もしも”あなた” が悲しみの全てを隠していたなら、最初から僕ら惹かれ合うことなんかなかったはずだ。秘密だらけの過去ならば、とうに色褪せ朽ち果ててしまっているはずだ。
つまり、二人は悲しみの全てを隠していたわけではなかったのです。ほんの少しかもしれないけれど、悲しみを分け合うことができていたのです。きっとできていたはずなのです。
"僕の知らない顔” はあったけれど、きっと二人で過ごした日々は無意味なものではなかったはずだ。主人公はそう信じることにするのでした。
二人でつけ合った傷の数が
あなたの日々に変わりますように
変わりますように
秋山黄色 モノローグ
どうか二人でつけ合った傷の数が、あなたの日々に変わりますように。
変えられないあの過去が、どうかあなたの人生の一部として残りますように。
失った過去は悔やんでもやり直すことなどできません。
ならば、せめてあの過去が意味のあるものであってほしい。
『モノローグ』は深い後悔の中でせめてもの救済を求める、主人公の祈りの歌なのです。
King Gnu『白日』と重ねて
『モノローグ』を聴いていると、King Gnuの代表曲『白日』と重なる部分が多くあることに気が付きます。
救いのない後悔を綴った歌詞、「失って初めて罪を知る」というメッセージ、間奏の歪んだギターソロ、などなど、どことなくKing Gnu感を感じずにはいられません。ドラマのタイアップ曲で公開が2月である、という点でも非常に似通っています。
しかし『モノローグ』と『白日』の間で大きく異なるのは、楽曲の結末。
『白日』では「過去の過ちはどうすることもできないから、せめて今日だけは忘れさせてくれ」と少々悲観的なのに対し、『モノローグ』では「せめて過去があなたにとって意味のあるものに変わってほしい」と前向きなエンディングになっているのです。
ひょっとしたら大ヒット曲『白日』と意図的に楽曲を重ね合わせ、エンディングを新たにアレンジすることで、令和の音楽シーンに新しい風を吹き込んでやろうというような意味合いを込めているのかもしれません。
そう考えてみると、1番終わりと2番終わりの間奏は米津玄師の『Lemon』や『アイネクライネ』っぽいような。
まとめ
秋山黄色が贈る、新時代の祈りの歌『モノローグ』。
皆さんも歌詞の意味に注目しながら、楽曲を聴きなおしてみてはいかがでしょうか。
ご意見・ご感想はお気軽にコメントください