平井堅『怪物さん feat.あいみょん』。
あいみょんという人物の持つポップさ、可愛らしさ、素直さ、色気、全てがすっと綺麗に溶け込んだ愛おしいコラボレーションです。
以前からお互いのライブに招き合うなど親交のあった2人が、ついに製作した楽曲のタイトルは『怪物さん』。
極度にポップでありながら、なんだかよくわからないようなタイトルです。平井堅さんいわく「完全に彼女をイメージして書いた」「僕なりの女性賛歌です」とのことですが…?
ここでは楽曲の歌詞に注目しながら、その意味を考察していきます。
歌詞解釈
今回のコラボにあたって、平井堅さんは「彼女のカラッとした媚びない色気が伝わればうれしいです。バカになりきれない女のやるせなさを歌にしました。僕なりの女性賛歌です」というコメントを寄せています。
バカになり切れない女のやるせなさ。楽曲ではその言葉通り、馬鹿になったふりして恋を堪能しようとする ”私” とそんな自分を消し去ろうとする ”私” の葛藤が描かれています。
バカになりきろうとする ”私”
楽曲は、女性視点で ”あなた” に恋する ”私” を描いたラブソング。
楽曲冒頭では、何も分からないふりをして恋に浸ろうとする "私” が登場しています。
私をそこらの女と同じ様に扱ってよ
あなたにふさわしいかなんて そんなには賢くなれないわ私が思うカワイイじゃね きっとあなた飽きてしまう
小石蹴るみたいに嘘ついて とりあえず安心させていて
平井堅 怪物さん feat.あいみょん
最初からインパクト抜群のフレーズですね。「私を特別扱いしてよ」ではなく「そこらの女と同じ様に扱ってよ」なのです。あたかも自分が愛されているかのような、なかなか思い切りのいい歌詞。
しかし実際に愛されてはいないということは、後の歌詞ですぐに明らかになります。
「あなたにふさわしいかなんて そんなには賢くなれないわ」
あなたに相応しいかを判断するほど、賢くはなりたくない。あなたにとって私が相応しい女か判断できないくらいには、バカなふりをしていたい。
こう読み取ってみるとよくわかるように、実際は ”私” は彼に惚れられてなんかいないのです。
バカなふりして「私を特別扱いしないでよ」なんて格好のいいことを言ってみただけで、多分冷静に判断してしまえば、”私” はふさわしい相手ではないのでしょう。
嘘でもいいからとりあえず安心させていて、というのが私の本音。
こんな風に楽曲では、「言葉とは裏腹に」というやつが頻繁に登場しています。
バカになりきれない ”私”
知らないって 知らないって 笑っていたい
わからないって わからないって とぼけていたいでも本当は
いなくなれ いなくなれ あなたを好きな私
いっそ いっそ いなくなれ
消えてしまえ 消えてしまえ あなたじゃなきゃ絶対
嫌な 嫌な 嫌な 嫌な 嫌な私
平井堅 怪物さん feat.あいみょん
自分があなたにふさわしくないとか、見え透いた嘘で踊らされているだとか、そんなのわからないってとぼけていたい。
都合のいいようなバカでありたい、という ”私” の想い。だけど、そうもなりきれないのが平井堅さんの言う「バカになりきれない女のやるせなさ」というやつです。
知らないって笑おうとしてはいるけど、「でも本当は」、そこまでバカにはなり切れず自分が愛されていないことに気付いてしまっている。だから、こんな自分いっそいなくなってしまえ!なんて自暴自棄になってみる。やるせない。
絵にかいたような「恋する乙女!」って感じがしますね。
好きで仕方がない”私”
ほら 大丈夫?って容易く聞く ぺらっぺらな優しさだけど
とにかく声が聞きたくなる ダメな私
あぁ 説明なんて出来ないから わかってなんて言わないから
とにかく今日も会いたくなる こんな私 いなくなれ
平井堅 怪物さん feat.あいみょん
散々「いなくなれ」とか「消えてしまえ」と連呼していた ”私” ですが、サビの直後にはあなたに恋をしている ”私” が溢れ出しています。しかもこの時の ”私” のほうがむしろイキイキしているような印象すら受けます。
「消えてしまえ」なんて一応言ってはいるものの、どうやら本気で「消えろ」とは思ってないようです。そりゃこんなポップな曲調でいくら「消えてしまえ」と言ったって本気感は全くないわけですが。これまた「言葉とは裏腹に」というやつですね。
私がそこらの女と何が違うか教えてよ
あなたがいない私なんて 本当は考えられないの
平井堅 怪物さん feat.あいみょん
楽曲の最後はこう締めくくられています。
バカになろうとしてみたり、恋する自分を消してみようとしてみたりして、二転三転裏表と感情が行ったり来たりするわけですが、結局はこの言葉に終着しています。
「あなたがいない私なんて 本当は考えられないの」
「バカになりきれない女のやるせなさ」というコンセプトのまさにその通り、好きで好きで仕方がないのに素直になり切れないもどかしい感じが痛いほど伝わってきますね。
どこが女性讃歌…?
平井堅さんはこの曲を「僕なりの女性讃歌です」と表現しています。
一見するとただの片思いの歌なので「どこが女性讃歌なんだ…?」という感じがしますが、よくよく聴いているとちょっと意味がわかるような気がします。
平井堅さんいわくこの曲は「完全に彼女(あいみょん)をイメージして書いた」とのこと。
叶わない片想いの歌。そういってしまえばそれまでなのですが、可愛らしくて、だけど素直になり切れない、このいかにも「あいみょん」といった感じのソングライティングに触れると確かに「女性って素晴らしいなぁ」という感情を覚えるのです。変な意味ではなく、女性らしさというか何というか、こう…
男女平等が叫ばれる世の中でうまく言葉にするのは難しいのですが、男性目線では間違いなく愛おしい女性の魅力を感じる一曲。誰も傷つけない「女性讃歌」という表現は言い得て妙だなぁと思います。
曲名『怪物さん』について
『怪物さん』というキャッチーなタイトルも、一見するとよくわからない要素のひとつです。恐ろしさと物々しさを感じさせつつも、『さん』と付いていることでどこか親し気で憎めない感じ。
きっと女性的に言えばこの膨れ上がった恋心が『怪物さん』であって、男性的に言えばこの可愛らしくて愛おしい女性の姿が『怪物さん』なのではなかろうか…?と個人的には思います。
ただ由来が何であれ「完全にあいみょんをイメージして書いた」楽曲のタイトルを『怪物さん』にしてしまう平井堅さんもなかなか恐ろしいものですが…(笑)
まとめ
女性目線では片想いを歌ったラブソング。
男性目線では恋する乙女の愛おしさを歌った女性讃歌。
平井堅とあいみょん、それぞれの個性が爆発した一曲でした…!
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