やせっぽち寄稿文

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【歌詞解釈】ヨルシカ「雨とカプチーノ」歌詞の意味を考察/美しい対比で描くエルマの交錯する想い。

ヨルシカ「雨とカプチーノ」。

「雨」と「カプチーノ」という美しい場面転換により、交錯するエルマの思いを歌った一曲です。

私個人としては最初に聞いた時に、サビで笑みさえ零れました。こんな美しい表現があるのか、と。

8月28日発売、アルバム「エルマ」収録曲。

8月1日にはMVも公開されています。


ヨルシカ - 雨とカプチーノ(Official Video)

 

 

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楽曲について

前作「だから僕は音楽をやめた」の続編となるアルバム「エルマ」収録の楽曲。音楽をやめた前作の主人公の手紙を受けたエルマの想いが歌われます。

「だから僕は音楽をやめた」の歌詞解釈はこちら

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 アルバム「エルマ」は曲順が前作「だから僕は…」の曲順に対応している様子。「エルマ」の4曲目「雨とカプチーノ」も前作4曲目「詩書きとコーヒー」を意識したタイトルになっているようです。

 

 

歌詞解釈

1番

灰色に白んだ言葉はカプチーノみたいな色してる
言い訳はいいよ 窓辺に置いてきて
数え切れないよ

雨とカプチーノ 作詞 n-buna 

思い浮かぶ言葉は言い訳ばかりで、カプチーノのように白けきっている。

前作主人公、エイミーへの想いを詩にしようとしても、エイミーに対する言い訳が口をついて出てきてしまう、そんな興ざめたエルマの心境が描写されます。

MVから、カフェテリアで詩を書いている場面であることが見て取れます。大人びていて、なんだか情に欠けた雰囲気。曲調も緩やかです。

 

 

灰色に白んだ心はカプチーノみたいな色してる
言い訳はいいよ 呷ろうカプチーノ
戯けた振りして

雨とカプチーノ 作詞 n-buna 

 心はカプチーノのように白けきっている。言い訳はもういいよ。

「呷る」は「あおる」と読み、仰向いて一気に飲み物を飲むことを指しています。

エルマの白んだ心みたいな、カプチーノを一気に飲み干す。

言い訳しようとする白けた心を押し殺しているようにも見えますね。

ここもゆったりとした曲調で、カフェの落ち着いたムードが漂っています。

カプチーノやカフェは、言い訳に走るエルマの冷淡な思いを象徴しているようです。

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さぁ揺蕩うように雨流れ
僕らに嵐す花に溺れ
君が褪せないような思い出を
どうか、どうか、どうか君が溢れないように

雨とカプチーノ 作詞 n-buna 

 心が揺れ動くように想いは流れ、私は溢れ出す思い出に溺れてゆく。君との記憶が色褪せないような思い出を。どうか、君が記憶から溢れてしまわぬように。

雨はエルマの溢れる想い、花はエイミーとの思い出だと捉えました。

実際に、2番で「思い出」は「花」に言い換えられています。

エルマは、溢れる想いにより「君」の記憶が薄れていくことを恐れています。

 

冒頭の「さぁ」を合図に転調。歌詞も「カプチーノ」のような白けた思いではなく、雨水のように溢れ出す情緒的なエルマの想いが歌われています。

 

白けた「カプチーノ」と、情緒的な「雨」の対比。

 

ここでは視点を一気に【カフェ】から【外の雨】へと移すことで、白けたエルマの言葉の裏側にある、彼女の溢れ出す想いを対照的に描き出しているのです。

 

 


 

 

2番

 

波待つ海岸 紅夕差す日
窓に反射して
八月のヴィスビー 潮騒
待ちぼうけ 海風一つで

雨とカプチーノ 作詞 n-buna  

海岸のカフェ、夕日は窓に反射する。八月のウィズビーでただ君だけを待つ。

ヴィスビーはスウェーデンの世界遺産都市。前作の主人公エイミーが訪れた都市であり、エルマが彼の訪れた土地を巡っていることがわかります。

自分の想いを描けぬまま、エルマはただエイミーの姿を待ち続けます。

 

 

夏泳いだ花の白さ、宵の雨
流る夜に溺れ
誰も褪せないような花一つ
どうか、どうか、どうか胸の内側に挿して

雨とカプチーノ 作詞 n-buna 

美しい思い出は溢れる想いに溺れていく。君を忘れないでいられる思い出を、どうか胸の内側に。

1番同様、「君」が心から消えることを危惧しているエルマの想いが描かれています。

ここでも「雨」の描写を用い、エルマのまっすぐな胸の内と言い訳に逃げる白けた心を明確に区別しています。

 

 


 

 

ずっとおかしいんだ
生き方一つ教えてほしいだけ
払えるものなんて僕にはもうないけど
何も答えられないなら言葉一つでもいいよ
わからないよ
本当にわかんないんだよ

雨とカプチーノ 作詞 n-buna 

 もう何もわからない。君に、生き方の一つでいいから教えてほしい。

エルマが「君」の思い出に縋り付く理由が語られています。今のエルマは、君への想いの綴り方も、生き方も、何一つわからない。だから、君が記憶から消え去れば答えはどこにもなくなってしまう。

曲調からして、冷淡な「カプチーノ」モードのエルマの心情です。

「本当にわかんないんだよ」と、なんだか諦めきったような苦しい胸の内。

 

 

 さぁ揺蕩うように雨流れ
僕らに嵐す花に溺れ
君が褪せないように書く詩を
どうか、どうか、どうか今も忘れないように

雨とカプチーノ 作詞 n-buna 

 心が揺れ動くように想いは流れ、私は溢れ出す思い出に溺れてゆく。君が記憶から消えないように書く詩を、どうか忘れないように。

再び転調し、「雨」モードのエルマへ。

今のエルマは「君があせないように書く詩」すら忘れつつあります。言い訳に逃げ、気づけば白けた言葉になってしまう。「本当にわかんないんだよ」。

それでも、彼女は君を忘れまいと苦悩し続ける。どうか、どうか、君だけは忘れたくない。溢れ出す彼女の想いです。

 

 

また一つ夏が終わって、花一つを胸に抱いて、
流る目蓋の裏で
君が褪せないようにこの詩を
どうか、どうか君が溢れないように

雨とカプチーノ 作詞 n-buna 

また年月は過ぎていく。君との思い出一つを心に抱いて、涙がにじむ目蓋の裏で。君が溢れないように、この詩を残した。

君と会えなくなってから、長い年月が過ぎています。君へのまっすぐな思いも書けなくなりつつある。だけどこの曲ではまだ、白けた想いが混じってはいるけれど、確かに君への想いが褪せるせることなく歌われています。「どうか、どうか君が溢れないように」

まだ、エルマの希望の灯は消えてなどいません。

 

 

 

まとめ

「雨とカプチーノ」という対比が美しい、交錯するエルマの想いを歌った一曲。

君を忘れまいと必死に思い悩む胸の内とは裏腹に、言い訳に走り想いを詩にできない苦しみ。それが、「雨」と「カプチーノ」、つまり「外の豪雨」と「カフェ」という場面転換により華麗に描かれています。

メロディも、ゆっくりと進行するAメロがサビで一転、重厚感あふれる、まさに「揺蕩うような」メロディへ。

鳥肌が立つような場面転換です。

音楽だからこそできる、歌詞と曲調が織り成した美しい表現がここにあります。

 

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