RADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」。
現実主義のこの世界で、愛や希望ができることはまだあるのか。愛にしがみつく僕らの在り方を問うた、独創的なラブソングです。
新海誠監督の映画「天気の子」の主題歌。
7月19日発売のサウンドトラック「天気の子」に収録されており、同日ミュージックビデオも公開されました。
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歌詞解釈
※映画の結末に関わるネタバレは一切ありませんのでご安心ください。
この曲では一貫して、愛や希望を唱える「僕ら」と、愛や希望を諦めた「世界」が対比的に描かれています。
1番
何も持たずに生まれ落ちた僕
永遠の隙間でのたうち回ってる
諦めたものと賢いものだけが
勝者の時代に何処で息を吸う
愛にできることはまだあるかい 作詞 野田洋次郎
希望を捨てたものや賢いものが勝者とされるこの時代に、僕の居場所などあるのか。
行き場のない主人公の苦悩が描写されます。
希望を追い求めて変化を起こせば、逆風にさらされるのが現代の世の常。理想なんか捨てて現実を受け入れられる人の方が生きやすい世の中になってしまいました。
どうやら主人公はそんな社会になじめないようです。
支配者も神も何処か他人顔
だけど本当は分かってるはず
勇気や希望や絆とかの魔法
使い道もなく大人は目を背ける
愛にできることはまだあるかい 作詞 野田洋次郎
支配者や神も助けてはくれない。 勇気や希望から大人は目を背ける。
本当は、大人たちも勇気や希望が起こす奇跡をわかっているはず。しかし現実主義の今の社会では、大人はそんなものに頼ろうとしないのです。
なんだか少し冷めきった、社会の実情が歌われています。
それでもあの日の君が今もまだ
僕の全正義のど真ん中にいる
世界が背中を向けてもまだなお
立ち向かう君が今もここにいる愛にできることはまだあるかい
僕にできることはまだあるかい
愛にできることはまだあるかい 作詞 野田洋次郎
諦めることなく立ち向かう君が、僕を動かしている。
ここで「君」が登場します。諦めばかりの世界が背を向けようとも、希望を捨てず立ち向かい続ける果敢な人物です。
そんな「君」が「僕の全正義のど真ん中にいる」から、主人公も世界に流されることなくあり続けようとする信念を貫いているようです。
君がくれた勇気だから
君のために使いたいんだ
君と分け合った愛だから
君とじゃなきゃ意味がないんだ
愛にできることはまだあるかい
僕にできることはまだあるかい
愛にできることはまだあるかい 作詞 野田洋次郎
君にもらった勇気は君のために使いたい。僕と君の愛は、君といないと意味がない。
主人公が君からもらった勇気と、君と分け合った愛。
世界の風潮がどうあろうと、愛する君と過ごさないと意味がないんです。そのくらい君は大切な存在だから。君と、勇気や希望が起こす奇跡を信じていたいんです。
そして問いかけます。希望を忘れたこの世界で、僕と君の「愛」なんかにできることがまだあるのか。希望を捨てられない僕なんかにできることがまだあるのか。
2番
2番の歌詞では、希望を捨てたはずのこの世界にいくらかの光が見出されます。
定めとはつまりサイコロのでた目
はたまた神のいつものきまぐれ
選び選ばれた 脱げられぬ鎧
もしくは遥かな揺らぐことない意志
愛にできることはまだあるかい 作詞 野田洋次郎
運命はただの偶然か、はたまた神の気まぐれか、必然的な宿命か、もしくは意志によるものか。
この世界のありようをふと考えます。もし偶然や気まぐれで運命が決まるのであれば、希望を諦める大人の生き方は正しいでしょう。でももしも、揺らぐことのない意志で運命を変えられるのだとしたら。
愛にできること、僕にできることはまだあるのかもしれません。
果たさぬ願いと 叶わぬ再会と
解けぬ誤解と 降り積もる憎悪と
許し合う声と 握りしめ合う手を
この星は今日も 抱えて生きてる
愛にできることはまだあるかい
僕にできることはまだあるかい
愛にできることはまだあるかい 作詞 野田洋次郎
世界は叶わない願いと別れ、誤解、憎悪、そして絆を抱えて今日も回っている。
「許し合う声と 握りしめ合う手」。これは紛れもなく絆・愛であり、希望です。
世界は確かに叶わない願いや憎悪といった、期待しても仕方ない現実を抱えています。しかしそれと同時に、希望だってまだ抱えているのです。
愛にできることはもうないのか?
そんなはずがありません。
君がくれた勇気だから
君のために使いたいんだ
君と育てた愛だから
君とじゃなきゃ意味がないんだ
愛にできることはまだあるかい
僕にできることはまだあるかい
愛にできることはまだあるかい 作詞 野田洋次郎
1番と同様なので解釈は割愛。
しかし、1番の状況よりも希望にあふれているのは確かです。
何もない僕たちになぜ夢を見させたか
終わりある人生になぜ希望を持たせたか
なぜこの手をすり抜ける物ばかり与えたか
それでもなおしがみつく僕らは醜いかい
それとも綺麗かい 答えてよ
愛にできることはまだあるかい 作詞 野田洋次郎
神はなぜ人間に希望をもたせるのか。なぜ目に見えないような希望ばかり与えるのか。見えない何かにすがろうとする僕らは正しいのか。どうか答えてよ。
手をすり抜ける「愛」や「希望」にしがみついて生きる私たちの在り方を神に問いただします。
考えてみれば、なぜ希望は私たちに見えない形で与えられたのでしょうか。もし答えがあるのならば聞いてみたい。そして人間の在り方の答えも。
主語は明示されていませんが、私たちの人生を扱いうるのは神くらいですから神が主語だと考えて問題ないでしょう。
愛の歌も歌われ尽くした
数多の映画で語られ尽くした
そんな荒野に生まれ落ちた僕、君 それでも
愛にできることはまだあるよ
僕にできることはまだあるよ
愛にできることはまだあるかい 作詞 野田洋次郎
愛はもう語られつくした。何もない世界に生まれた僕たち。
それでも、愛にできること、僕にできることはまだあるはずだ。
最後の歌詞は希望を歌います。
愛がみせる光なんてとうに語られつくしているし、世界は諦念に溢れています。
それでも、僕と君だから、この愛があるからこそできることがまだある。
君を愛する主人公の、祈りにも似た希望の詩です。
まとめ
現実主義のこの世界に、愛や希望ができることはまだあるのか。
科学や論理が世界を形作る中で、大人はそんなものとうに諦めてしまいました。
未だに目に見えないものにしがみつく「僕ら」の在り方を神に問うた、近未来的なラブソングです。
そして最後には
「愛にできることはまだあるよ 僕にできることはまだあるよ」と締めくくりました。
どんなに世界が作り変わろうと、僕らの愛や希望はまだ終わらない。そんな祈りを形にした美しい一曲です。
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