やせっぽち寄稿文

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King Gnuが『ユーモア』で描いた愛すべき人間の姿とは。歌詞の意味を考察

King Gnu 『ユーモア』

『ロマンシング サガ リ・ユニバース』TVCMにも起用された今作は、人間の営みの矛盾・滑稽を巧みに描き出した哀愁漂うナンバーである。

ユーモア

ユーモア

  • King Gnu
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 ここではその歌詞に注目しながら曲の魅力を紐解いていきたい。

 

描かれる『ユーモア』について

曲名は『ユーモア』。しかし曲を聴いてみると、クスリと笑ってしまうような面白い歌詞はどこにも見当たらないことにすぐに気が付くだろう。
では一体この作品の何が『ユーモア』なのだろうか。その真意を探るべく、ここではユーモアの狭義的な意味に注目してみたい。

人間生活ににじみ出る、おかしみ。上品なしゃれ。人生の矛盾・滑稽(こっけい)等を、人間共通の弱点として寛大な態度でながめ楽しむ気持。

 Googleでユーモアの意味を調べると、真っ先にこんな言葉が目に飛び込んでくる。今となっては「滑稽さ」とほとんど同義的に用いられる「ユーモア」だが、本来の意味は滑稽さの中でもより高尚な、人間の営みから生まれる面白さを指す言葉のようである。

よって楽曲『ユーモア』で描かれる「ユーモア」とはいわゆるジョークの類では決してなく、人間の在り方の滑稽さを寛大に楽しむ姿勢であることが分かる。
この前提の下で歌詞に注目していくと、なるほどKing Gnuの言わんとすることがよくわかる。

 

愛すべき人間の『ユーモア』

のらりくらりと踊るんだ
なんだかんだで憂鬱が
影を落とした午前二時

どうしようもないこの世界を
悪あがき、綱渡り
その心、裏腹に胸騒ぎ

この曲の背景には、どうしようもないこの世界への諦めが感じられる。
悪あがきして、綱渡りして、それでも裏腹に不安を胸に秘めて。思い通りになんか行きやしない。憂鬱が影を落とす、午前二時の心模様。

 

背伸びしたってアヒルはアヒルか
空の蒼さを眺めているんだ

こんな夜は聞き慣れた
歌でも聞きたいな

アヒルは上手く飛ぶことができない鳥である。所詮私たち人間がどれだけ背伸びしたって、届かないものは届かない。無理なものは無理。望んだこと全てが叶うはずはないのだ。どうしようもないこの世界。そんなことを痛感しながら音楽に身を預ける。
しかしこの後の歌詞で人間らしさが溢れ出す。

きらりこの世を踊るんだ
なんだかんだで上手く行く
気がしている午前三時

素晴らしきこの世界を
悪あがき、綱渡り
その心、裏腹に胸騒ぎ

憂鬱が影を落とした午前二時からものの一時間で、「なんだかんだで上手く行く気がしている」のだ。この一時間で別に何が変わったわけでもない。ただ音楽を聴いただけ。なのに「どうしようもない世界」「素晴らしき世界」へ生まれ変わっている。

どうしようもない、望んだことなど叶わない世界だということは痛いほどわかっているにも関わらず、馬鹿みたいに希望を持とうとする。それもあきれるくらい簡単なきっかけで。実にバカらしくて、どこまでも人は愚かな生き物である。


だけど、どこかその愚かさには可愛げがあって、憎めないのは私だけではないだろう。
”人間生活ににじみ出る、おかしみ。上品なしゃれ。人生の矛盾・滑稽(こっけい)等を、人間共通の弱点として寛大な態度でながめ楽しむ気持。”
この曲で描かれている人間の在り方は、まさにこの『ユーモア』そのものなのである。

『ユーモア』は「なんだかんだで上手く行く気がしてきた午前一時」、「なんだかんだで憂鬱が影を落とした午前二時」そして「なんだかんだで上手く行く気がしている午前三時」によって構成されている。この間主人公の行動が描かれることは一切ない。つまるところ、この曲は単なる深夜の考え事にすぎないのである。早く寝て明日に備えた方がよっぽど生産的なはずだが、何をするでもなく物思いにふけり、音楽を聴いている。馬鹿らしい。だが、哀愁があってちょっと趣を感じる。誰だって同じ経験があるだろう。共感できないはずがない。

行き当りばったり彷徨った
夢にまで見た桃源郷は何処

暗くなったら火を灯そう
孤独を分け合えるよ

こんなどうしようもない世界なのに、悪あがき、綱渡り。時に不安になり、憂鬱に苛まれながらも、火を灯し互いに孤独を分け合う。

実にバカらしくて、愚かで、滑稽な人生。

だけどどこか可愛げがあって愛おしい。これは人間の営みの『ユーモア』を描いた、哀愁漂うナンバーなのだ。

 

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