RADWIMPS「大丈夫」。
この曲無くして「天気の子」はない。
新海誠監督の映画「天気の子」の主題歌で、エンドロールを除く本編のトリを飾る、雄大で荘厳な超大作。
7月19日発売のサウンドトラック「天気の子」に収録されており、「大丈夫」を使用した特別映像も現在公開中です。
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歌詞・映画の考察
※この記事は映画の結末に関わるネタバレを含みます。映画の展開を知りたくない方は、ブラウザバックをお願いいたします。 以下ネタバレ。
帆高が陽菜を空から連れ戻してから3年が経ち、降り続けた雨により1/3が水没した東京。そんな雨降る街の思い出の坂道で、彼らはついに3年ぶりの再会を果たします。
世界が君の小さな肩に 乗っているのが
僕にだけは見えて 泣き出しそうでいると
「大丈夫?」ってさぁ 君が気付いてさ 聞くから
「大丈夫だよ」って 僕は慌てて言うけど
なんでそんなことを 言うんだよ
崩れそうなのは 君なのに
大丈夫 作詞 野田洋次郎
彼らが青空ではなく陽菜の命を選択したことで、世界の形は決定的に変わってしまいました。
まさしく、「世界の形」というあまりに莫大すぎる重責が陽菜の肩には乗っています。「世界の形を変えた」という重すぎる事実に直面し、泣き出しそうな帆高。
もちろんそれは当事者である陽菜も同じです。むしろ陽菜の方が苦しいはず。
自分の命一つのために、たくさんの人々の幸福を奪ってしまったのですから。
だけど、帆高の泣き出しそうな様子を見た陽菜は「大丈夫?」と声をかけた。
出会ったばかりのころ、廃墟で声をかけてくれた時のように。
「なんでそんなことを 言うんだよ 崩れそうなのは 君なのに」。
本当に苦しいのは自分のはずなのに。そんなこと言わないで、僕に頼ってくれればいいのに。励ましてあげるべきなのは、僕の方なのに。
取るに足らない 小さな僕の 有り余る今の 大きな夢は
君の「大丈夫」になりたい 「大丈夫」になりたい
君を大丈夫にしたいんじゃない 君にとっての 「大丈夫」になりたい
大丈夫 作詞 野田洋次郎
世界の大きさなんてものと比べれば、取るに足らない僕。
「君を大丈夫にしたいんじゃない」。
もう世界の形は大きく変わってしまった。
君を大丈夫にはしてあげられないのかもしれない。
だけど君と生きて、君と支えあって、「君にとっての『大丈夫』になりたい」。
そんな帆高は、映画の最後にこう言い放ちます。
「陽菜さん、僕たちは、大丈夫だ」。
もちろん、そこには何の根拠もありません。
「若気の至り」と言ってしまえばそれまでなのかもしれません。
現実には私たちはこの映画に登場する「大人たち」の立場にいて、こんなにも無茶で、利己的で、痛すぎる帆高と陽菜のような行動はきっと受け入れられないでしょう。社会的にも受け入れられるはずがありません。
だけど、映画を見て心を突き動かされる自分がどこかにいます。私たちはまだ映画の「大人たち」にはなり切れていないのです。大切な人の大丈夫になりたい。根拠なんかなくても、どれだけ無茶でも、きっと僕たちは大丈夫だ、と信じていたい自分がどこかに必ずいます。
映画でいうところの須賀のように、心のどこかには、最後の最後にはそんな「若気の至り」を応援している自分がいるのです。
なにも帆高と陽菜に限った話ではありません。すべての人の、「大切な人の大丈夫になりたい」という想いに訴えかける作品。
それを愛と呼ぶのなら、「愛にできることはまだあるよ」と私たちにそっと教えてくれる作品。
それが「大丈夫」という曲であり、「天気の子」という映画そのものであると思うのです。
楽曲について
歌詞の考察、といいつつ映画の内容を列挙しただけの記事になってしまいましたが、それには理由があります。
小説版「天気の子」のあとがきによると、
新海監督が「天気の子」の脚本を野田洋次郎さんに送り、「大丈夫」のデモ曲が完成した1年後。当初は「大丈夫」を映画で使う予定はなかったそうですが、ラストシーンの演出に迷った監督は改めてこの曲を聴いた時、これこそが物語のラストシーンだ、と衝撃を受けたそうです。「それ以外は他に在りようもない」と。
その後、ほとんど歌詞から引き出すようにラストシーンのコンテを描き、そこにこの曲を当てた、とのこと。
つまり、この映画のラストシーンこそが楽曲「大丈夫」の新海監督の解釈であり、この曲なくして「天気の子」が完結することはあり得なかったのです。
ちなみに野田さんは、「大丈夫」は帆高と陽菜の曲であるために、果たしてこの曲がエンドロールとしてお客さんたちの曲になるのか疑問に思っていた、とのこと。
洋次郎さん、大丈夫ですよ、ちゃんと受け止められましたよ、と声を大にして言いたいです。
まとめ
この曲無くして「天気の子」はありません。
映画のラストに相応しい、雄大で荘厳な超大作。
いや、この曲に相応しいエンディングが「天気の子」のラストシーンだ、というべきなのかもしれません。
君を大丈夫にしたいんじゃない。
君を大丈夫にはできないのかもしれない。
だけど君と生きて、君と支え合って、君にとっての大丈夫になりたい。根拠なんて何もないけど、僕たちは大丈夫だ。
彼らの愛なら、きっとどんな困難も乗り越えられるだろう。
そう思わずにはいられない、私たちを突き動かす美しい一曲です!
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