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【King Gnu/白日】 歌詞の意味を考察 紅白披露の2019年を代表する名曲を解説

2019年2月配信、King Gnu 「白日」。

土曜ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」の主題歌として書き下ろされ、Apple Musicランキングでは堂々の1位を獲得。紅白歌合戦をはじめ多くの歌番組でも披露され話題を集めています。2019年を代表する名曲と言っても過言ではないでしょう。

一度聴いたら耳から離れない印象的なメロディと、胸を締め付けるような美しい歌詞。もうとにかくかっこいい。

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この記事ではその歌詞に注目し、楽曲の魅力を紐解いていければと思います。

 

歌詞解釈

前提として、すべて私の個人的な解釈です。聴いた人それぞれに解釈がありますので、私の解釈を押し付けるつもりはさらさらない、ということをご理解ください。

 

1番

時には誰かを
知らず知らずのうちに
傷つけてしまったり
失ったりして初めて
犯した罪を知る

King Gnu 『白日』 作詞 常田大希

美しいファルセットで始まるAメロ。無自覚のうちに人は誰かを傷つけてしまうもの。そして傷つけた後に自らの罪を悔いるものです。俗に言う「生きる罪」というもの。ただ生きているだけで、ほかの誰かを苦しめてしまう。そのどうしようもない罪悪感。

 

戻れないよ、昔のようには
煌めいて見えたとしても
明日へと歩き出さなきゃ
雪が降り頻ろうとも

King Gnu 『白日』 作詞 常田大希

「戻れないよ、昔のようには」。

罪を犯す前の人生がどれがけ煌めいて見えようと、その頃に戻ることなどできません。たとえその罪が無自覚のうちに犯されていたとしても。

それ以後の人生はその苦しみを背負い続けなければならない。そして、それでも前を向かなければなりません。

悲しいほどに非情な歌詞です。でもそれが現実。Aメロではそのどうしようもない事実が突きつけられます。

 

今の僕には
何ができるの?
何になれるの?
誰かのために生きるなら
正しいことばかり
言ってらんないよな

どこかの街で
また出逢えたら
僕の名前を
覚えていますか?
その頃にはきっと
春風が吹くだろう

King Gnu 『白日』 作詞 常田大希

 Bメロでは少しばかりの希望が唄われています。

誰かを傷つけ、罪を背負った「今の僕」。こんな自分なんて存在に、一体何ができるのか。

ここでいう「正しいこと」というのは、例えば「嘘をつかない」ことであったり、「自分に正直に生きる」ことであったりといった、世間一般的に見た「正しいこと」。でも誰かのために生きるには、そんな綺麗事ばかり言ってられません。

「どこかの街でまた出会えたら」。

知らず知らずのうちに傷つけ、失ってしまった大切な誰か。きっと今は、会うことすら躊躇われるような誰か。

僕の名前を忘れてしまうくらい長い長い時間を経て、もしもまた出会うことができたなら。出会っても許されるような日が来たら。それだけ長い年月を経れば、どうしようもない罪の意識も忘れられるかもしれません。その頃にはきっと救われるだろう。そんな希望が「その頃にはきっと春風が吹くだろう」という一文に込められているのではないでしょうか。

 

真っ新に生まれ変わって
人生一から始めようが
へばりついて離れない
地続きの今を歩いているんだ

真っ白に全てさよなら
降りしきる雪よ
全てを包み込んでくれ
今日だけは
全てを隠してくれ

King Gnu 『白日』 作詞 常田大希

もし真っ新な状態で人生をやり直すことが出来ようが、その人生で「今」という現実から逃れることなんてできない。どれだけ反省して生まれ変わった気になったって、過去の自分が犯した罪が存在する「今」という時間からは逃れられないのです。

この類の歌詞でよくある「更生する」という解決策に現実を突きつけます。そんなもの解決になんかならないと。

そして後半部分は、そんな現実を踏まえた切実な願い。先ほどの季節の話を踏まえれば、歌っている「今」は雪が降りしきるほどの真冬。春の兆しも見えないような、罪の意識の真ん中にいる状態でしょう。

そんな中で一つだけ願うとするならば、それは今この瞬間だけでも、その罪を忘れさせてほしい。罪から逃れることなんてできやしないとわかっているけれど、せめて今日だけは全てを忘れさせてほしい。この状況の中で望むことのできるもっとも切実な願い。

 

『2019年を代表するヒット曲!!』なんて言葉で簡単に表現されがちな『白日』ですが、歌っている内容はかなり現実主義で残酷なのです。

 


 

2番

Aメロは1番の内容と重なる部分が多いので割愛させていただきます。

 

いつものように笑ってたんだ
分かり合えると思ってたんだ
曖昧なサインを見落として
途方のない間違い探し

季節を越えて
また出逢えたら
君の名前を
呼んでもいいかな
その頃にはきっと
春風が吹くだろう

King Gnu 『白日』 作詞 常田大希

2番のBメロ。1番からさらに状況が具体化されています。

知らず知らずのうちに誰かを傷つけ、失った。

「曖昧なサインを見落として 途方のない間違い探し」。

何か相手の想いをはかり知るサインがあったかもしれないけれど、見落としてしまった以上今更その合図に気づくことなどできません。失った人と過ごした膨大な時間を振り返って、どこで間違えてしまったのか途方もない間違い探し。

後半は1番のBメロ同様。今は会うこともないし、呼ぶこともない君の名前。もっと言えば、相手を傷つけた出来事以降名前を呼ぶこともはばかられたのかもしれない。それをもし、またどこかで呼んでもいい時が来るのであれば。その頃にはきっと。

ここでの「季節を超えて」は当然時間の流れであり、精神状態の変化でもあります。

 

 

2番のサビは1番と同様なので省略させていただきます。サビ終わりの「忘れさせてくれよ」の心に突き刺さる感じは何物にも形容しがたい。クライマックスでもいいくらい魅力的なのに、そこからさらに魅力的な展開が続くから恐ろしいです。

 


 

3番

朝目覚めたら
どっかの誰かに
なってやしないかな
なれやしないよな
聞き流してくれ

King Gnu 『白日』 作詞 常田大希

「朝目覚めたらどっかの誰かになってやしないかな」。

もしもどこかの誰かになれたなら、過去に犯した罪から逃れることができるでしょう。そう思ってはみるものの、そんなこと起こり得ない。聞き流してくれ。そんな取り留めもない願望が描かれています。

1つ願望が心に浮かんで来て、言葉にはしてみたものの、そんなこと有り得ないと搔き消す。そんな思考の流れがここに打ち込まれていて、一気に主人公に人間味が増しているような印象を受けます。

 

 

忙しない日常の中で
歳だけを重ねた
その向こう側に
待ち受けるのは
天国か地獄か

King Gnu 『白日』 作詞 常田大希

「歳だけを重ねた」。罪を犯した後、何かこれといって償いができたわけでもなく、ただ時間だけが過ぎていった。「その先に待ち受けるのは天国か地獄か」。

いつか罪の意識が無くなるときが果たして来るのか、春風は本当に訪れるのか。

自らの行く末を案じています。

 

いつだって人は鈍感だもの
わかりゃしないんだ肚の中
それでも愛し愛され
生きて行くのが定めと知って

後悔ばかりの人生だ
取り返しのつかない過ちの
一つや二つくらい
誰にでもあるよな
そんなんもんだろう
うんざりするよ

King Gnu 『白日』 作詞 常田大希

ここではある種、この世界の現実に対する諦めのようなものを感じさせます。

相手が心の底で何を思ってるかなんてわかりゃしないのに、それを知った上で愛し愛されて生きていくしかない。なにもわかりゃしないのに、傷つけたり失ったりしないように。世の中はどこまでも理不尽です。

知らず知らず相手を傷つけるのが人間というもの。過去に犯した罪に今も苦しめられているのは俺だけじゃないよな?あなたにだって過ちの1つや2つくらいあるよな?と不意に聴き手に語り掛けます。急に曲の世界観に引き入れられてハッとします。

そして最後には、それでも生きていかなければならない「人間」というどうしようもない存在に対し、「うんざりするよ」と吐き捨てています。人間として生まれてきたことに対する諦め。 

 

真っ白に全てさよなら
降りしきる雪よ
全てを包み込んでくれ
今日だけは
全てを隠してくれ

King Gnu 『白日』 作詞 常田大希

「人間」に生まれた以上どこかで過ちを犯し、その罪から一生逃れることなんかできません。だけどせめて今日だけは、すべてを覆い隠してほしい。今日だけでいいから、すべてを忘れさせてほしい。

 どんな曲よりも現実を見据えていて、どこにも明るい希望が見えない楽曲。それでもこの曲がこれほどまでに愛されているのは、やはり誰もが何らかの罪の意識を抱えているからなのかもしれません。

 

まとめ

「白日」という言葉には、「やましいことのない例え」という意味があります。今日だけは、何もない真っ新な自分でいさせてほしい。そんな切実な願いの込められた、King Gnuの傑作『白日』。今後も多くの人を魅了し、傷つけ、慰めてくれる一曲であり続けるだろうと確信しています。

 

 

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白日は2020年1月15日発売のアルバム『CEREMONY』収録の楽曲です。ご予約はこちらから。

 

 

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